いわさき司法書士事務所の津田です。

試験では頻出といえる部分ですが、久しぶりに思い出す機会がありましたので、メモ程度に書いてみます。

 

不動産登記法25条において、申請の却下事由の定めがありますが、その7号で「申請情報の内容である登記義務者の氏名若しくは名称又は住所が登記記録と合致しないとき。」が挙げられています。

 

登記義務者の住所・氏名等に変更が生じていた場合には、事前に登記名義人住所・氏名変更登記(通称「名変登記」)をしておかなければ、その後の登記は却下されるため、住所・氏名等の変更の有無は確実に確認して必要があります。

 

例外的に、相続登記(相続を原因とする権利の移転登記)や合併による移転登記は、被相続人や被合併会社の住所・氏名等に変更が生じていた場合でも、名変登記が不要とされています。

 

では、相続・合併と同じ包括承継である会社分割による権利の移転登記の前提として、分割会社に商号変更・本店移転があった場合、名変登記は必要となるのでしょうか?

 

答えは“必要”です。

 

正確な理由はよくわかりませんが、会社分割を原因とする移転登記は共同申請だからとのことです(これに対して、相続登記や合併による移転登記は、相続人・合併による承継会社の単独申請で行います)。

私が受験時代に記憶していたのは、不動産登記法25条の規定ぶりから、「不動産登記法25条の7号の規定は、“登記義務者”が対象なので、単独申請で行う相続登記における被相続人や合併による移転登記の被合併会社は、申請に関与しない(すでにこの世にない)ため登記義務者ではなく、名変登記は必要ない」という理由付けで覚えていました。

 

なお、登記義務者の住所・氏名が登記簿上の住所・氏名と異なる場合でも、名変登記を要しないケースとしては、

  1. 所有権以外の権利(買戻権を含む)の抹消の登記義務者の住所・氏名に変更が生じている場合
  2. 所有権の仮登記の抹消の登記義務者の住所・氏名に変更が生じている場合

があります。

 

これらの場合、抹消登記の際に変更を証する情報を提供して申請することとなります。

 

ちなみに、登記権利者が当該不動産の登記簿上の名義人である場合、登記権利者の氏名・住所等に変更が生じていた場合には、名変登記は必ず必要と覚えておいて問題ないと思います。