いわさき司法書士事務所の津田です。

小泉司法書士予備校というのをご存知でしょうか?

ちょっと前まで、YouTubeで講義を公開しており、5万円程度のテキストを購入すれば、それでインプット講義を視聴して学習できるようになっていました。
(現在は月額制となり、月会費3300円(税抜)を支払えば、インプット講義だけでなく、過去問演習や答練などを自由に受講できるスタイルになったようです)

もし時間を巻き戻せるなら、これで勉強しても良かったかもしれないと考えることがあります(大幅に出費を抑えることができますからね)。

講師の小泉先生は、以前大手資格試験予備校のLECで看板講師だった人です。

実は、この小泉司法書士予備校で使用されるテキストを巡って、小泉先生とLECの間で法廷闘争になったことがありました。

小泉予備校のテキストは、小泉先生がLECの講師だった頃、レジュメとして受講生に配布されていたものがベースとなっているらしく、これを利用して小泉予備校を開講したことが、著作権を侵害しているとして、LECが小泉先生を訴えました。

資格試験予備校講師は、業務委託で行われており、雇用関係にはありません。

もし、雇用関係にある場合、就業時間中に業務に関連して著作物を作成すれば、それは職務著作といって、その著作権は当然に会社に帰属します。
(よく似たものに"職務発明"というものがありますが、こちらは特許権で、当然には会社に権利は移転しません。ノーベル賞を受賞された中村修二氏が、勤務先だった日亜化学工業を相手に青色LED特許の帰属・移転対価を巡って訴訟をしていました。第一審で200億円の支払いを命じた判決が出たことは当時衝撃が走りました)

一方、業務委託の場合には、原則として教材を作成した講師の側に著作権があり、当然にはLECには著作権が帰属することはありません。
(ただし、契約形態が業務委託であっても、実態として雇用関係にあれば話が違ってきます。事実上の労働者派遣が業務委託の形で行われる偽装請負の話との関連で、そのうちお話しできればと考えています)

そこで、LECは先手を打って小泉先生との間で業務委託契約書の中で著作権譲渡契約を締結していました。
このような著作権を譲渡する契約自体は有効に行うことができます。

これに対して、小泉先生側は、特別に使用許諾があったことや、契約当時の両者の交渉力の差をもって、契約の不当性を争点にしようとしていたようです。
また、独占禁止法や下請法を根拠にあげて、著作権譲渡契約の無効を主張していましたが、仮に独占禁止法の不公正な取引方法に該当したとしても、課徴金の支払いが要求されるというだけで、独禁法違反に該当すれば直ちに契約が無効になるというわけではありません。
特別の使用許諾については証拠がなかったようです。

ここまで来ると、小泉先生は旗色が悪いように思えますが、裁判所は驚きの判決を下します(東京地裁平成23年(ワ)第14347号事件)。


「予備校本には、著作権はない」※1

この結論は、勝訴した小泉先生にとってよかったのでしょうか?

頑張って教材を作っても、複製・模倣し放題となれば、創作意欲がなくなりそうです。
勝者のいない裁判だったのかもしれません。

今回はこれで失礼します。

※1…実際には、LECのテキストの中から小泉先生のテキストでそのまま用いた部分についての判断だったので、テキストをそのままコピーするケースではまた結論が異なることになろうかと思います。個別具体的な事案の検討は不可欠です。