いわさき司法書士事務所の津田です。

日本の大多数の会社では、経営者=株主ですが、ごく稀に少数株主が存在するケースがあります。
先代の相続の際に後継者である現経営者に株式を集中させることができなかった場合や従業員の帰属意識を高めることを目的に株式を持たせている場合などが考えられます。

この場合、経営者自身が100%の株式を保有している場合と異なり、招集通知が必要となり、機動的な株主総会の開催が難しかったり、剰余金の配当の振込手数料が必要になったりと、株主の管理コストを考慮する必要が出てきます。

逆に、100%の株式を経営者が保有していれば、株主総会の招集通知を省略することができ、機動的な会社経営を行うことができます。

経営者による100%の株式保有を実現する方策としては、次の3つが考えられます。
  1. 株主間売買
  2. 全部取得条項付き種類株式の取得
  3. 特別支配株主による売渡請求

1.株主間売買」は、大株主である経営者が少数株主と売買契約を締結して、株式を買い取ることです。
お互いの合意さえあれば良いので、最も簡便な方法といえます。
(ただし、上場会社の場合には、株式公開買付(TOB)が強制されるなど金融商品取引法の規制があるので注意が必要です)

流れとしては、株主間で株式の売買契約を締結し、次に株主名簿の名義書換えの手続きを行います。
多くの会社で株式の譲渡制限が設けられているので、名義書換えの際、取締役会(または株主総会)で譲渡承認決議を行います。

3.特別支配株主による売渡請求」は、会社の発行済株式の90%を保有する株主が、会社の承認を受けて、少数株主が保有する株式を強制的に買い取るものです。
大株主が経営者でない場合には、この方法を用いることになります。

今回ご紹介するのは「2.全部取得条項付種類株式の取得」を用いた方法です。
全部取得条項付種類株式とは、「株主総会の決議によって、その全部を取得することができる旨の定めのある株式」のことです。

平成17年の会社法施行の段階では、100%減資を実現する方法として考えられていましたが、金銭を支払って少数株主を強制的に締め出す手法(キャッシュアウト、スクイーズアウト)としても用いられています。

それでは、全部取得条項付種類株式の取得の流れを見てみましょう。
なお、全部取得条項付種類株式を発行するには、2種類以上の種類株式を発行できるようにしておく必要があります。

現に発行している種類の株式をA株式、新たに発行する種類の株式をB株式として説明していきます。
  1. 必要な書面を会社に備え置いて、株主の閲覧に供する。
  2. 株主総会の特別決議により、既存の株式をA株式とし、それとは別にB株式を発行することができる旨を定款で定める。
  3. 株主総会の特別決議により、A株式について、全部取得条項を設ける定款変更を行う。
  4. A株式の株主を構成員とする種類株主総会の特別決議で、A株式に全部取得条項を設けることを承認する。
  5. 取得日の20日前までに、全部取得条項付き種類株式を取得する旨の株主への通知または公告を行なう。
  6. 株主総会の特別決議により、A株式を会社が取得することを決定する。その際、取得対価として、B株式を経営者に、少数株主には金銭を支払うとすることを決定する。
  7. 必要な書面を会社に備え置いて、元株主の閲覧に供する。
"特別決議"とは、当該株主総会において議決権を行使することのできる株主の議決権の過半数(定款により3分の1まで軽減可能)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の多数をもって行う必要のある決議です。ただし、特例有限会社については、決議要件が異なり注意が必要です。

2・3・4・6については、一度に行うことが可能です。
また、5の通知・公告は、2・3・4・6の株主総会の招集通知に合わせて行えば足ります。

なお、会社法上、全部取得条項付種類株式の一連の手続きでは、
  1. 全部取得条項を設ける際の反対株主の買取請求への対応
  2. 全部取得条項付種類株式の取得の際の裁判所の価額決定手続きへの対応
が定められていますが、いずれも少数株主に異議がなければ行う必要のない手続きです。
仮に、これらの手続きを踏まなければならなくなった場合でも、1については少数株主を追い出すことが目的なので、買取りに応じれば良いだけですし、2の価額決定の申立てについては、裁判所に書面を提出するだけの手続きですので、司法書士でも対応可能です。

以上が全部取得条項付種類株式を用いた少数株主の締め出し策の流れです。

これで、B株式の100%を経営者が保有し、A株式はすべてが自己株式(議決権なし)として会社が保有している状態になります。
会社が取得したA株式は、そのまま消却してもいいですし、事業承継のために後継者に割り当てることも検討して良いと思います。

事業承継は早めの対策で、検討できる自由度が広がります。
その前段階で、持ち株比率の調整を行っておくことは有用と思われます。

本日はこれで失礼します。