いわさき司法書士事務所の津田です。

先週、「相続登記を義務化する」という方向で法制審議会が中間試案をまとめることが決まったというニュースがありました。

所有者不明土地 10年経過すれば相続分に応じ分割可能に(NHK WEB NEWS)

来月中に取りまとめ、パブリックコメントで意見を募り、法制審議会の答申を受けて、必要な立法化を目指すとのことです。

現在、所有者不明土地問題というものがあり、現時点でも九州全体の面積を上回る土地の所有者が不明となっているといわれています。
最後の登記から50年以上経過している不動産は、都市部で6.6%、地方で26.6%にも及び、今後拡大していくと予想されます。
また、登記簿のみでは所有者の所在が確認できない土地の割合が、全体の約20.1%あるそうです。

報道でわかる限りですが、
  • 遺産分割の手続きがなく10年が経過すれば、法定相続分に応じて分割できるようにする
  • 一定期間内に相続登記を行われなければ過料を課す
  • 相続があった場合には、相続人から自治体への届出を義務化
  • 権利の帰属に争いがなく、管理が容易であることなどの要件を満たす場合は、土地の所有権を放棄できるようにする
というもので、これにあわせて相続登記の申請方法を簡素化することも検討されています。

ただ、罰則を設けるにしても、取り締まられなければ意味がありません。
実際、表題登記には所有者に登記義務があり、罰則も設けられています(不動産登記法164条)が、実際に過料の支払いを求められたという話は聞きません。

司法書士は相続登記の際、依頼者に持参いただいた権利証、市町村から送られてくる固定資産税納税通知書名寄帳、それらに載っている物件の登記情報にある共同担保目録から被相続人の不動産を把握します。
しかし、非課税の不動産については、そもそも固定資産税納税通知書には記載されないことがあるため、その不動産の存在に気付かないことがあり、登記がなされないまま所有者不明土地化することになります。

また、名義が被相続人のままになっている不動産の固定資産税の納税通知書は、相続人の一人に届くだけです。
その結果、共有関係にある遠い親戚はそもそもその不動産の存在を知らないまま放置されます。

被相続人の不動産の名寄せで漏れが生じないように、住所と氏名で権利者を特定して登記簿を検索することはできないのでしょうか?
登記簿がコンピュータ化したのであれば、対処は可能だと思います。

なお、相続の結果、共有状態になった場合、それを解消する手段として取得時効を適用して権利者を一本化することが考えられます。
この場合、他の共有者が簡単に判をついてくれればよいのですが、応じてくれなければ訴訟を起こすしかありません。

取得時効の要件として、占有開始の時を証明する必要があり、判例では占有開始日を任意に選択することはできないとされています(昭和35年7月27日最高裁判決)。
当事者間でもめているので権利自白がされることもなく、立証責任を負う時効取得者には、かなり大きな負担がかかります。
これでは「いつから占有しているのか分からない」ケースでは、所有権の帰属を確定されることができません。

なお、先日、固定資産税の納税義務者を従来の所有者に加えて、所有者不明の場合には、使用者に請求できる案が政府税制調査会で検討されているというニュースもありました。

所有者不明土地、使用者から課税可能に 来年の通常国会で法改正へ(産経ニュース)

所有者不明土地問題に関する法制審議会の議論は、「相続登記を怠っている」という前提に立ち過ぎのように思います。
「そんな不動産を所有しているなんて知らなかった」ということが起こらないような制度設計を考えていくべきではないでしょうか。

本日はこれで失礼します。