いわさき司法書士事務所の津田です。

今回は減資の手続きについて取り上げたいと思います。
減資は、正式には"資本金の額の減少"と呼びます。

次のようなケースでは会社の資本政策として、資本金の額の減少を検討されることもあると思います。
  • 法人税の優遇を受けるため
  • 法人住民税の均等割など外形標準課税を安くするため
  • 中小企業基本法の中小企業としての適用を受けるため
  • 会社法上の大会社の規制を逃れるため
など…

資本金は登記事項であり、資本金を変更したら2週間以内に会社の変更登記を行う必要があります。

しかし、資本金の額の減少の手続は意外に厄介です。
原則として、
① 株主総会の特別決議による承認
② 債権者保護手続
を行う必要があります。

株主が広範囲に渡らない中小企業の場合には、①はそれほど問題にならないでしょう。

一方、②は債権者を巻き込んだ非常に大掛かりな手続となります。
  • 官報に資本金の額の減少を行うことを公告する
  • 分かっている債権者に資本金の額を減少する旨、異議がある場合は1ヶ月以上の会社の定めた期間に申し出る旨を各別に催告する(債権者への各別の催告は、会社の公告方法を定款以外の方法と定めている場合には、その公告方法により公告することで省略できます)
順序は問いません。ただし、債権者保護手続が終わっていない場合には、資本金の額の減少の効力は終了するまで生じません。

債権者が異議がある旨を申し出た場合、債権者を害するおそれがない場合を除いて、弁済、担保の提供・信託等の保全措置を講じることが求められます。

ただし、注意を要するのは金融機関との関係です。
融資契約上、一定の事項について事前の報告義務が定められているケースがあり、それに違反したとして、返済が求められることがあるからです。
そうでなくても、金融機関との良好な関係を保つ上で、事前の根回しが必要でしょう。

※金融機関の取引約定書には、次のような規定が定められています。
「債務者の財産,経営,業況,資金繰り等について、「重大な変化が生じた」場合また は「重大な変化が生じるおそれがある」場合には、債務者は、債権者から請求がなくても、速やかに債権者に報告するものとします。」

株主総会の特別決議については、次の2つの例外があり、承認決議の要件が緩和されています。
  • 定時株主総会において、欠損の填補を目的とする場合には、株主総会の普通決議によることができる。
  • 募集株式の発行と同時に行う場合で、前後の資本金の額に変更がないケースでは、取締役会の決議によることができる。

官報による公告の際、決算公告を行なっていない多くの中小企業では、最終の貸借対照表の要旨も公告の内容としなければなければなりません。
(資本金の額の減少の際に貸借対照表の要旨を官報へ掲載する場合、4枠公告となるので、15万円近い費用がかかります)
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このように、減資の際に債権者に対する手続きが重視されるのは、資本金が株主と債権者の利害の調整のために設けられているものだからです。
資本金自体は単なる計数であって、それに相当する財産が会社にあることを保証するものではありません。
しかし、資本金に相当する資産は株主への配当が制限される一方、"資本金の額"を減少して"その他資本剰余金"に振り替えると、剰余金となった部分については、株主に配当することが可能になります。
その結果、債権者の取り分が減ると考えるのです。

最後に、上記すべての手続きが完了して登記申請を行うことになります。
申請書に添付する書類は、次の通りです。
  1. 株主総会議事録+株式リスト
  2. 官報
  3. 債権者への個別催告の文面(代表者による証明入り)
  4. 債権者リスト(代表者による証明入り)
  5. 司法書士への委任状
※3・4は合綴して、会社の実印で割印をします。

登記完了後、税務署に異動届を提出して、一連の手続きが完了です。
(許認可業種であれば、このほかに監督官庁への届出が必要です)

会社法施行に伴い、最低資本金制度が廃止されましたが、資本金は一旦定めると債権者との関係で会社を拘束します。
最初の段階で、将来の会社のビジョンを明確にして、資本金を検討される必要があるでしょう。

本日はこれで失礼します。