いわさき司法書士事務所の津田です。

多くの中小企業では、本業が忙しい上に、そもそも株主は社長だけだったりするので、役員の任期を意識することはないと思います。
しかし、役員の任期が到来すれば、同じ人が引き続き役員を続ける場合でも、選任手続きをし、登記しなければなりません。
商業登記の場合、登記を怠れば過料の制裁がありますし、なんら登記せずに12年経過すれば休眠会社扱いされて、法務局に職権で解散登記されてしまうこともあります。

役員変更登記は、会社の"生存確認"の機能を果たしているともいえます。

今回は、株式会社における取締役の任期の考え方をご紹介します。

取締役の任期は定款で何も定めなければ、「選任から2年以内に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結まで」となります。

"2年間"なのではなく、"2年内に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結"までというのがポイントです。

選任された株主総会の2年後の日付を求め、そこから最終の決算期まで遡ります。
そして、その決算期の計算書類を承認する定時株主総会が閉会となったタイミングで退任します。

なぜこのような規定になっているかといえば、毎年開催される定時株主総会までにしておけば、取締役の選任のためだけに臨時株主総会を開催する必要がないためです。
また、定時株主総会は、会社の事業活動の成績表である計算書類を株主が承認する場でもあるため、そこで取締役の適性を見極めて選任決議の議決権を行使できるという理由もあります。

ここで注意が必要なのは、2年の起算点となるのは"選任から"ということです。
例えば、3月決算の会社で、令和元年12月に臨時株主総会を開催して、Aさんを新たに選任しました。
しかし、Aさんは取締役への就任を渋っていて、なかなか就任を承諾しません。
令和2年4月になって、ようやくAさんが就任を承諾しました。
この場合、Aさんの任期は、令和3年の定時株主総会の閉会の時までとなります(実質1年程度です)。

では、現取締役の任期が満了したのに、新たな取締役を選任しなかった場合、どうなるのでしょうか?
この場合、任期の終わった取締役は、新たな取締役が就任するまで取締役としての権利・義務を有することになります("権利義務取締役"といいます)。
これまで通り経営者としてやっていくわけです。
しかし、会社法で取締役の選任懈怠ということで、過料の制裁があります。
この状態では辞任も、解任もできません。

また、定時株主総会が開かれなかった場合は、本来定時株主総会を開催すべき期間の末日が任期満了となります。
定款に「3ヶ月以内」と定められているケースが多いですが、3月決算の会社であれば、6月30日をもって任期満了となります。

権利義務取締役がいる場合、従前の取締役の退任日は、新しい取締役の就任日ではなく、任期が満了した日となります。
そのため、任期満了し同時に再任された場合には、「年月日重任」と登記されますが、同じ再任であっても、「年月日退任」「年月日就任」と登記されます。

【重任の場合】
登記事項
令和1年6月27日 次の者重任
                              取締役A
                            (住所)代表取締役A

【一旦権利義務取締役となる場合】
登記事項
令和2年6月30日 取締役A退任
同日       代表取締役A退任
令和2年7月15日  次の者就任
                            取締役A
                          (住所)代表取締役A  

閉鎖会社(発行する株式の全部に譲渡制限が設けられている会社)であれば、定款に定めることで、取締役の任期を「選任から10年内に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時」まで伸長することができます。
2年ごとの登記費用も無視できないので、会社の実情や今後の経営方針にあわせて、この定款の規定の見直しをアドバイスさせていただいております。

定款の取締役の任期規定の変更によって、現在の取締役(権利義務取締役)の任期は次のような取扱いを受けることになります。
  • 任期満了前に定款で任期を伸長した場合、変更後の任期が適用されます。
  • 任期満了後に定款で任期を伸長した場合、あくまで従前の任期満了日が退任日となります。
  • 定款で任期を短縮した場合、変更後の任期が適用されます。
  • 短縮した任期によれば、すでに任期が満了している場合には、定款変更の効力が生じた時に任期満了となります。

ちなみに、「10年後に役員の選任手続きしないといけないことを覚えてられるだろうか…」という意見もあるでしょう。
パソコンやスマホで仕事のスケジュール管理をされている方には、10年後の事業年度末に「"役員の選任手続き"」とスケジュールを入力しておくことをお勧めしています。
(あわせて、弊事務所の連絡先を入れておいていただくとありがたいですね)

ちなみに、特例有限会社の役員には任期はありません。
取締役の重任登記の手間を考えれば、株式会社への商号変更はお勧めできません。
一方、特例有限会社は株主総会の決議要件が厳しいなど、事業承継を検討する上でネックになる部分もあるので、今後の経営方針を確認させていただき、メリット・デメリットを踏まえてご提案させていただきます。

本日はこれで失礼します。