町職員、DV被害者情報漏えい 広島県世羅、2人戒告

広島県世羅町は18日、親族の男性からドメスティックバイオレンス(DV)の被害を受けていた女性の住所などが記載された戸籍付票を、男性側の依頼を受けた司法書士に交付していたと発表した。総務省通知の認識不足が原因で町は担当した町民課職員2人を13日付で戒告の懲戒処分としている。

町によると、女性はDV被害を防ぐために転出先の県外自治体から住民票などの閲覧や交付を制限する措置を受けていた。ところが6月下旬に町役場に来た司法書士に「会社の登記変更のため」と付票交付を求められ、対応した同課の係長(50)と主任(42)が交付してしまったという。付票が入手されたことを知った女性が、転出先の自治体へ漏えいを指摘して発覚した。

総務省通知は、法的に認められた司法書士の職務上の請求であっても男性の申し出と同視して拒むことができ、特別な場合は他の方法を探るよう求めている。2職員はこの通知の理解が足りず、不適切な対応をしてしまったという。町は8月12日に懲戒審査委員会を開き、13日に2職員の懲戒処分を決定。女性に電話で謝罪した。

町によると、男性から女性に直接の接触はなかったとしている。ただ、町は発覚以降、司法書士に事情を聴いておらず、付票が何のために使われたかも把握できていない。奥田正和町長は「信頼を損なう結果となったことを反省し、再発防止に努める」などとするコメントを出した。(神下慶吾)
2020/8/19 中国新聞


平成24年のDV防止法の施行を受けて、各市町村では「ドメステック・バイオレンス、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の保護のための支援措置(DV等支援措置)」として、DV等の加害者からの住民票の写しや戸籍の附票の閲覧や交付請求があっても拒否する取扱いがされています。

また、なりすましにより住民票等が不正に取得されるのを防ぐため、写真付き身分証明証による本人確認や請求事由の審査が特に厳格に行われることになっています。

このDV等支援措置を受けるには、住民票や戸籍の附票のある市町村の窓口で「住民基本台帳事務における支援措置申出書」を提出します。
そして、市町村は、警察・配偶者暴力相談支援センター・児童相談所などの相談機関の意見を聞くなどして、DV等支援措置をとるかどうかを決定します。

DV等支援措置による住民票・戸籍の附票の非開示の期間は1年間で、終了の1ヶ月前から延長の申し出を行うことで、さらに1年ごとに延長することができます。

なお、住民基本台帳法では、司法書士など(特定事務受任者)は、受任している事件・事務の依頼者が住民票の写しなどを請求できる場合、受任事務に必要な範囲で依頼者に代わって交付請求をすることが認められています。

司法書士の場合は、司法書士会から「職務上請求書」という複写式の統一用紙を購入し、それに必要事項を記入の上、司法書士の会員証や補助者証を提示して役所の窓口で請求します。
「職務上請求書」は金庫等鍵のかかるところに保管しておき、紛失・盗難の危険を防止しなければなりません。
また、すべての請求書に連番が振られており、どの司法書士がどの職務上請求書を持っているのかが司法書士会により管理されています。

司法書士等の特定事務受任者は、あくまで依頼者に代わって住民票等を請求できるのであって、第三者の立場ではありません。
そのため、総務省より平成30年3月28日付「ドメスティック・バイオレンス、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の保護のための住民基本台帳事務における支援措置に関する取扱いについて」という通知が出されており、この場合は住民票等の請求は拒絶されます。

今回、「会社の変更登記の手続きのため」に司法書士が職務上請求で戸籍の附票を取得したとしていますが、一般的に戸籍の附票を商業登記で用いることはありません。

考えられるケースとして、取締役会設置会社の取締役・監査役として、新たに今回のDV被害者を就任させる登記を行う場合に、本人確認証明書として添付することがある程度でしょうか…

仮にこの司法書士が請求の事由に虚偽記載をしていた場合、結構重い懲戒処分の対象になるではないかと思われます。

【参考】DV等支援措置がとられている者を当事者とする不動産登記について
【不動産登記】DV等被害者の住所と登記の諸問題①(被害者が所有権移転登記の義務者になるケース) 
【不動産登記】DV等被害者の住所と登記の諸問題②(被害者が所有権移転登記の権利者になるケース)