支配人とは、特定の営業所(本店または支店)の事業について裁判上・裁判外の一切の行為を会社を代わって行う権限を有します(会社法11条)。
つまり、特定の営業所の事業の範囲内で、代表取締役と同等の権限を有しています。

規模の大きな会社の場合、各地の支店に支配人を置き、不動産登記の申請において支配人が登記申請の委任状を発行していることも多く見られます。
(支配人は印鑑を法務局に登録できるため、支配人の登録印で委任状に押印することで、本社から実印を押印した委任状を郵送するという手間を省けます)

支配人に関する事項は、会社の登記における登記事項であり、支配人を選任すれば、支配人選任の登記をしなければなりません(義務)
支配人に関する事項とは、具体的には次の通りです。
  • 支配人の氏名および住所
  • 支配人を置いた営業所

では、支配人を置いた本店以外の営業所は、支店として登記されている必要があるのでしょうか?

会社は”会社法上の支店”を設置した場合、支店の登記を行う必要があります(義務)
しかし、“支店”という名称であればすべてが会社法上の支店に該当するわけではありません。
会社法上の支店とは、「本店とは別に独自の営業活動を決定し、対外的な取引をなし得る営業所の実質を備えるものをいう」(商業登記ハンドブック第3版P200~P201)とされています。

支店に置かれた支配人は、本店から独立して支店独自の営業活動を決定する権限を有するため、その支配人のいる支店は会社法上の支店に該当します。

よって、支店に置く支配人の選任の登記の前提として、支店の登記を必ず行う必要があります。

逆に、支店設置の登記を行う際、必ずしも支配人選任の登記を行うわけではありません。
これは、支配人の代理権が営業活動の決定権限だけでなく、訴訟上の権限にも及ぶため、訴訟代理権を与えりつもりがないのであれば、支配人を選任すべきではないからです。

そして、支配人が置かれた営業所の移転・廃止を行う場合、「本店移転」「支店移転・廃止」の登記と「支配人を置いた営業所の移転・廃止」の登記を同時に申請しなければなりません(商登規58条)。

商業登記規則第58条【会社の支配人を置いた営業所の移転等の登記】
会社の支配人を置いた本店又は支店について移転、変更又は廃止があつたときは、本店又は支店に関する移転、変更又は廃止の登記の申請と支配人を置いた営業所に関する移転、変更又は廃止の登記の申請とは、同時にしなければならない。

ちなみに、支店の設置・支配人選任の登記の添付書類は、支店の設置を決定し、支配人を選任した「取締役の過半数の一致を証する書面」または「取締役会議事録」※と司法書士への「委任状」だけです。
※支店の設置・支配人の選任はともに、取締役会設置会社の場合は取締役会、取締役会非設置会社の場合は取締役の過半数の一致で決定する必要があります。

つまり、取締役や監査役の就任登記の際の就任承諾書のような、支配人に選任された者の就任承諾書は不要です。
これは取締役・監査役などの役員と会社の関係が委任関係で、支配人と会社の関係は雇用関係であるという違いから来ています。
委任契約は当事者双方の合意により成立しますが、雇用関係にある場合、当然に会社の指揮命令に服するため、合意が求められないことによります。