改正法成立

所有者不明土地問題の解消に向けた民法や不動産登記法の改正法などが21日、参院本会議の全会一致で可決され、成立しました。
(本日令和3年4月28日公布)

これまでも改正法案についてとりあげてきましたが、あらためて不動産登記法を中心に、改正後のポイントを押さえてみます。

(過去の記事)
相続登記義務化へ① (2021/02/11更新)
相続登記義務化へ② (2021/02/17更新)
相続登記義務化へ③ (2021/03/19更新)

 

相続登記の義務化

不動産所有者の相続人に対し、取得を知ってから3年以内の相続登記を義務付けました。遺贈(相続人に対する遺贈)も同様とされます。

第76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請)
所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
2 前項前段の規定による登記(民法第900条及び第901条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第4項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
3 前2項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
相続人申告登記の新設

相続人が登記名義人の法定相続人である旨を申し出る制度が新設されます。
単独で申請が可能で、添付書類も簡易なものになるようです。
(相続人は少なくともこの申出を行えば、相続登記の義務を履行したとみなされます。ただし、その後に遺産分割が行われた場合は再度登記の義務が発生します)

第76条の3(相続人である旨の申出等)
前条第1項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
2 前条第一項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第1項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。
3 登記官は、第一項の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる。
4 第一項の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前条第一項前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
5 前項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、同項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
6 第一項の規定による申出の手続及び第三項の規定による登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。
「所有不動産記録証明制度」の新設

自分や被相続人が登記名義人になっている不動産の一覧を証明書として取得できるようになります。

第119条の2(所有不動産記録証明書の交付等)
何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む。)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面(以下この条において「所有不動産記録証明書」という。)の交付を請求することができる。
2 相続人その他の一般承継人は、登記官に対し、手数料を納付して、被承継人に係る所有不動産記録証明書の交付を請求することができる。
3 前2項の交付の請求は、法務大臣の指定する登記所の登記官に対し、法務省令で定めるところにより、することができる
(以下略)
過料

正当な理由なく相続登記を怠った場合は、10万円以下の過料を科す旨定められました。遺贈(相続人に対する遺贈)も同様とされます。

第164条(過料)
(…)第76条の2第1項若しくは第2項又は第76条の3第4項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。
(以下略)

 

住所・氏名変更登記の義務化(第76条の5、164条2項ほか)

転居や婚姻などで住所や氏名が変わった場合、2年以内に変更登記を申請することが義務化されます。法人の商号変更や本店移転についても同様です。

第76条の5(所有権の登記名義人の氏名等の変更の登記の申請)
所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から二年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。
職権登記の導入

住基ネットや商業登記システムから取得した情報に基づき、登記官が職権で変更登記をすることが可能になります。

第76条の6(職権による氏名等の変更の登記)
登記官は、所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったと認めるべき場合として法務省令で定める場合には、法務省令で定めるところにより、職権で、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記をすることができる。ただし、当該所有権の登記名義人が自然人であるときは、その申出があるときに限る。

151条(情報の提供の求め)
登記官は、職権による登記(…)を作成するために必要な限度で、関係地方公共団体の長その他の者に対し、その対象となる不動産の所有者等(所有権が帰属し、又は帰属していた自然人又は法人(法人でない社団又は財団を含む。)をいう。)に関する情報の提供を求めることができる。

追跡用の情報を登記事項に追加

会社法人等番号や国外在住者の連絡先等を登記事項に追加できるようになるようです。

第73条の2(所有権の登記の登記事項)
所有権の登記の登記事項は、第59条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
1 所有権の登記名義人が法人であるときは、会社法人等番号(…)その他の特定の法人を識別するために必要な事項として法務省令で定めるもの
2 所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは、その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるもの
(以下略)
過料

正当な事由なく怠った場合、5万円以下の過料を科されます。法人の商号変更や本店移転についても同様です。

第164条(過料)
2 第76条の5の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、五万円以下の過料に処する。

 

その他のポイント

「相続等による取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が成立しました。
相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により取得した土地を手放して、国庫に帰属させることを可能とする制度を創設されます。帰属にあたっては、管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地でないことが要件とされます。
また、審査手数料のほか、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額の負担金を徴収されます。
また、登録免許税の減税など、登記を促進する措置もとられる見込みです。

その他、今回の改正法では、不在者の財産管理制度の見直しや、共有物の利用の円滑化、遺産分割協議の期限の変更、隣地の管理・利用の円滑化などが盛り込まれているようです。
詳細は、また追って取り上げたいと思います。

 

施行日について

相続登記義務化関係の改正:公布の日である本日(令和3年4月28日)から3年以内の政令で定める日
住所変更登記義務化関係の改正:5年以内の政令で定める日

 

改正による新旧対照表はこちら (法務省HPより)

「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」 (法務省HPより)

 

関連ページ: