改正法成立へ

所有者不明土地問題の解消に向けた民法や不動産登記法の改正法などが21日、参院本会議の全会一致で可決され、成立しました。
(本日令和3年4月28日公布)

以前の記事では、相続登記と住所変更登記の義務化を主題に、不動産登記法の改正点をまとめました。今回は、登記権利者の単独申請をテーマに、注目すべき改正箇所をとりあげてみます。
相続登記・住所変更登記の義務化についてはこちら

 

登記は共同申請が原則
第60条(共同申請) ※変更なし
権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。

登記の申請は、一定の例外(たとえば判決による登記や、仮登記の抹消など)を除いて、登記義務者と登記権利者の共同申請が原則です。たとえば、売買の登記においては、売主と買主の共同申請、住宅ローンの抵当権抹消登記においては、銀行と所有者の共同申請などが必要です。
今回の改正では、登記手続きの負担軽減がはかられ、単独申請可能な例外が増えることになりました。

 

遺贈の登記が単独申請できるように(相続人への遺贈に限る)

遺贈の登記は、登記権利者(受遺者)と登記義務者の共同申請が原則でした。遺贈者は登記の際には故人であるため、遺言で遺言執行者が指定されているときは遺言執行者が、遺言執行者がいない場合は相続人全員が登記義務者になる必要があります。
今回の改正により、相続人に対する遺贈の登記に限っては、登記権利者(受遺者である相続人)が単独で申請できるようになります。

第63条(判決による登記等)
(…)
3 遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、第60条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。
(以下略)

 

買戻権の抹消登記が単独でできるように

買戻権とは、「売主が代金額および契約の費用を買主に返還することによって売買契約を解除し、目的物を取り戻すことができる」とする特約のことです。通常、転売を防ぐために登記されます。
買戻権についての当事務所ブログ記事はこちら

買戻の期間は最長で10年ですが、期間を渡過しても自動的には抹消されるわけではなく、抹消登記が必要です。都道府県や住宅供給公社が販売した不動産について登記簿を確認すると、買戻権がついたままになっていることがしばしばあります。すでに効力のない買戻権であっても、抹消登記には買戻権者(県や住宅供給公社等)に所定の手続きが必要です。
今回の改正により、契約の日から10年を経過している買戻権の登記については、登記権利者(所有者など)は、単独で登記申請ができるようになります。

第69条の2(買戻特約に関する登記の抹消)
買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から十年を経過したときは、第六十条の規定にかかわらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

 

除権決定による抹消登記の適用拡大

抵当権等の登記を抹消するには、登記権利者と登記義務者の共同申請が原則ですが、登記義務者の所在が知れないため登記義務者と共同して権利の登記の抹消登記を申請することができないときは、公示催告の申立をし、除権決定を得ることにより、登記権利者が当該権利の登記について、単独で抹消登記を申請することができることができます。
これを「除権決定による抹消登記」といいますが、この制度が利用しやすくなるようです。

第70条(除権決定による登記の抹消等)
登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が知れないためその者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは、非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)第99条に規定する公示催告の申立てをすることができる。
2 前項の登記が地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権に関する登記又は買戻しの特約に関する登記であり、かつ、登記された存続期間又は買戻しの期間が満了している場合において、相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないときは、その者の所在が知れないものとみなして、同項の規定を適用する。
3 前2項の場合において、非訟事件手続法第106条第1項に規定する除権決定があったときは、第60条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独で第1項の登記の抹消を申請することができる。
(以下略)

 

解散した法人の抵当権抹消等の登記が簡易に

解散した法人が権利者である抵当権抹消等などは、清算人の協力を得て、共同申請を行うことが原則です。清算人が全員死亡している場合は、新たに裁判所で清算人を選任してもらう必要があります。
今回の改正により、解散した法人の抵当権等で、その法人の清算人の所在が判明しない場合、弁済期および解散の日から30年を経過していれば、登記権利者は単独で抹消登記ができるようになります。

第72条の2(解散した法人の担保権に関する登記の抹消)
登記権利者は、共同して登記の抹消の申請をすべき法人が解散し、前条第2項に規定する方法により調査を行ってもなおその法人の清算人の所在が判明しないためその法人と共同して先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消を申請することができない場合において、被担保債権の弁済期から三十年を経過し、かつ、その法人の解散の日から三十年を経過したときは、第60条の規定にかかわらず、単独で当該登記の抹消を申請することができる。

以上、単独申請をテーマに不動産登記法の改正箇所をとりあげてみました。今後の施行に注目したいと思います。
ご参考になれば幸いです。

改正による新旧対照表はこちら (法務省HPより)