先日、とある都銀から抵当権設定登記の依頼をいただきました。
土地の購入時にまず抵当権の設定を行い、建物の完成後、既存抵当権に建物を追加設定するという事案になります。

多くの場合、土地の登記簿住所は新居へ入居する前の住所(土地購入時の住所)になっているため、建物が完成し住民票を移動した後に、所有権登記名義人の住所変更登記が必要です。また、所有者=債務者であるときは、債務者の住所も旧住所で登記されていることになります。

このようなとき、いままでの取引事例では、所有者の住所変更に加えて、債務者の住所変更登記(抵当権変更登記)を行う必要が常にありました。しかし、実は登記的には、債務者の住所変更登記は必須ではありません。

関連する先例をご紹介します。

登記研究425号125頁
【要旨】抵当権の債務者の表示変更と追加設定
(問)既登記抵当権の債務者の住所に変更があったが、その変更登記をしないまま、債務者につき新住所での追加設定登記を申請することができるか。
(答)変更登記をしないまま、変更後の住所で債務者を表示した追加設定登記は、受理される。

 

登記研究422号105頁
【要旨】根抵当権の追加設定の登記をする場合における前登記の債務者の表示との符合の要否
(問)根抵当権の追加設定登記を申請したが、その後債務者の表示が変更され、又はその表示に誤りがある場合において、当該根抵当権の追加設定登記を申請するときには、その前提として債務者の表示変更(更正)を省略できるか。
(答)省略できない。

 

登記研究560号136頁
【要旨】抵当権の追加設定登記と既登記抵当権者の表示変更登記の要否
(問)抵当権の追加設定登記を申請する場合において、抵当権者の本店や商号が変更されて、すでに登記されている抵当権者の抵当権者の表示と追加設定の抵当権者の表示が一致しないとき、変更登記が必要であるか。
(答)変更を証する証明書を添付し、変更後の本店および商号を表示した追加設定登記をすることができる。

 

なお、今回の依頼においては、建物の追加設定にあたり、債務者の住所変更登記を行わないという指示が銀行からありました。こちらの銀行は、追加設定の前提として債務者の住所変更は行わないという取扱いだそうです。
ただし、登記の可否にかかわらず、変更登記の要否は必ず金融機関に確認する必要があると思われます。
ご参考になれば幸いです。