こんにちは、いわさき司法書士事務所のミサカです。
本日のコイン通りは雨に少々けぶっているようです。いかがお過ごしでしょうか。

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先日、学生時代によく通った書店が来月閉店するというニュースを耳にしました。中規模ながら、文芸から専門書までひととおりは揃うお店です。5万人以上を抱える学生街の、しかも文学部のキャンパスのそば、そのうえ駅のすぐ隣という立地の本屋さん。日本の中でも最も本を読むたぐいの人種が集まる場所だったはずです。ずいぶんな衝撃と、実のところちょっとした憤りさえおぼえました。日本人は、学生は、本を読まなくなったのか!と。ここでだめなら、もう本屋さんなんてやってけないんじゃないか。

しかし、思えばわたしももうしばらく書店で本など買っていません。学生時代、古書含め月20冊近くは本を買ったものですが、現在は月1冊を買うかどうか。活字中毒気味だったわたし、電車に乗るときは本を必ず1冊は持ち歩いていましたが、今はiPhoneでニュースや雑誌の記事をぼんやり眺めることがほとんどです(実際、車内を見回しても本を持つ乗客はめっきり減ったようです)。そのうえたまに買う本も、このところはかなりの確率でAmazonから。何でも揃っていて、決済はクレジットカードで一発、しかも早ければ翌日には届いてしまう。一冊から送料は無料。ネットショッピングがあまり好きではないわたしも、Amazonだけは頻繁に使います。

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昨年フランスの国民議会は、いわゆる“反Amazon法”を可決しました。
フランスでは以前にも、大規模書店から個人書店を守るため、当時の文化相の肝煎りでラング法("Loi Lang"/1981) という法律が制定されたという歴史があります。書籍販売についてのこの法律は、価格の明記を定めた他、例外として5%のディスカウントを認める以外の一切の安売りを禁じています。今回の法律は、そのラング法の修正案という形で送料無料を実質禁止する形です。

再販売価格維持制度のある日本でも同様に書籍は定価販売ですが、送料についてはサービスの範囲内ということで何らの定めはありません。このため、Amazonをはじめ地力のある大手の書店の多くは、送料無料のネット販売を行っています。一方、フランスはこの送料無料サービスについて、事業者がラング法の抜け穴をかいくぐって書籍を不当に安く販売している行為とみなすことを選択しました。これは5%のディスカウント+送料無料をうたってシェアを拡大し続けるAmazon他大手ネット書店から、小規模書店を救済しようという国家としての意思にほかなりません。

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見回せば、広島の街でも、子供のころに比べ個人営業の書店がずいぶんと減っているように思います。その代わりに、ショッピングモールのフロアぶち抜きの大規模書店がいくつも続いてできている。検索端末をいくつも備えた、全国展開の大手書店です。活字離れに、Amazonらネット書店の浸透、そして巨大書店チェーンの地方進出。少ないパイをかけた争いはますます激しくなり、個人書店の生き残りはますます難しくなっているでしょう。

さて、最前お話しした学生街の書店ですが、じつはこのはす向かいにもう一軒、同じく本屋が店を構えています。つぶれたという話は聞きませんから、おそらく二軒の生存競争にこちらが勝ったのでしょう。残ったお店のほうは、閉店する書店よりも一回り規模が小さく、扱う書籍の規模も少ないですが、演劇や音楽、アート等の関連書籍の揃いが実によろしい。小説や漫画のラインナップにも癖があります。一言でいうとセレクトにサブカル色が強いわけです。おそらくこれはうちの学生(とくに文学部の)の嗜好に合わせたもの。通りいっぺんの品揃えなら、なんといっても大学生協のほうが割引が効くし、隣の駅にはそれこそ大規模書店があるわけです。

そういえば近年大成功した代官山蔦谷書店も、店構えは大きいですが、品揃えにはものすごく偏りがあります。アート・写真・ファッション・旅行・食・車など、目的にはまればたいへんマニアックでセンスの良いセレクトです。専門のコンシェルジュまで常駐し、なにを聞いてもハイハイ、とすぐ答えてくれます。しかしないものはまったくない!普通の文庫本なんて、棚もありません。

独自のエディトリアルで勝負し、セレクトショップ化を強めるこのやり方は、ネット書店と大規模店舗と、まるで徒手空拳で戦うことを強いられる個人書店にとって、おそらくひとつのビジネスモデルです。通いなれた本屋さんの閉店のニュースはさみしい限りですが、一方で勝手ながら競争時代の書店のあり方を考えさせる、興味深い知らせでした。

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さて、すっかりとりとめもなく長くなってしまいました。
今週も今日でおしまいですね!
生憎のお天気ですが、どうぞよい休日をお過ごしください。
本日はこのあたりで失礼します。